旧町名を復活させたい ~上連雀町・下連雀町~

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大雨で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧、復興をお祈りしております。甲府市も過去には水害で苦しめられた地域がいくつもあります。私も決して対岸の火事と思わず自分のことと捉えて、有事の際に備えたいと思います。


上連雀町、下連雀町は、甲府城が築城された際に古府中にあった連雀小路を移したものです。江戸初期の連雀町は1~3丁目までありましたが、勘文年間(1661~1672年)に上連雀町、下連雀町へと分かれたということで、300年以上親しまれてきた名称ということになります。

ところで「連雀」とはどういう意味なのでしょう?
Wikipediaで調べてみたところ
【連雀(れんじゃく)】
①レンジャク科の鳥。日本で見られるのはキレンジャク(黄連雀)とヒレンジャク(緋連雀)。
②物を背負うのに用いる背負子(しょいこ)。
③日本に見られる地名の一つ。
とあります。

背負子の連雀とは「連尺」とも書くそうで、江戸時代の行商の多くはこの連尺で荷物を担ぎ、各地を往来していたとのこと。連尺を用いる行商が渡り鳥の雀のように見えた事から「連雀」とも書かれるようになったようです。江戸時代の城下町では、行商が連尺に荷を繋げたまま荷物を下ろし、その場に店を出した地域があり、各地で連雀町という名の由来になっています。発音をそのままに漢字を変えるという文化は、現代ではあまり見られなくなりましたが、江戸時代から昭和初期まではさまざまなところで見られます。
これは
壱.昔の日本人は現代よりも粋に日本語を使いこなしていた。
弐.読み書きの教育が行き届いていないことから、間違った漢字のまま広まることが多かった。
という私なりの仮説を立ててみましたが…どうでしょうか?それとも他の理由があるのでしょうか?

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さて、話を連雀町へと戻します。上の写真は大正~昭和初期の連雀町通りの様子です。
時間帯のせいか人影は少ないですが、ノボリや看板から活発な商業活動がうかがえます。
この頃の連雀町は茶店、米穀店、豆腐店、小間物・雑貨店、質屋などがあり、問屋街ではなく商店街として栄えていたようですが、他の町と同じく甲府空襲によって全焼してしまいます。問屋街となったのは終戦後で、繊維関係を中心に急速に町を形成していきました。しかし、昭和52年に田富町で流通団地がオープンしたのを契機に多くの業者が移転をし、盛時の活気は見られなくなりました。現在では3カ所にある「連雀問屋街」のアーチと「連雀町通り」という通りの名称が、連雀の名を留める数少ない存在となっていますが、このアーチに関しては撤去されることが決まっているようです。

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2014年6月19日付の山梨日日新聞によると、昭和56年に設置されたアーチは老朽化によって地震などで倒壊する危険性があることや、補修には多額の費用がかかることから撤去を決めたとのこと。記事が掲載された時点では時期は決まっていないようですが、費用が確保できしだい撤去されるそうです。この記事を読み、問屋街の全盛期を知らない私でさえ寂しく感じた訳ですから、地元の方々にとっては苦渋の選択だったのではないでしょうか?ただ、アーチの看板部分はモニュメントとして残すことを検討しているということですので、楽しみにしたいと思います。

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▲東側からみた現在の連雀町通り

昭和の大合併により無くなってしまった旧町名も、更に時代を重ねることで面影が薄くなっていきます。旧町名は、その地の歴史の扉を開く鍵のような存在ではないでしょうか?その鍵を後世に引き継ぐことは、この地で生まれ育った誇りを引き継ぐことにも繋がると思います。なるべく数多くの鍵を引き継げるよう、今後もこのコーナーを通じて、歴史を紐解いていきたいと思います。

文:川上明彦

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▲旧城下町エリアにはこのような看板がいくつも設置されています。ご存知でしたか?

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■参考資料:甲府街史、甲府市統計書、山梨百年、Wikipedia