旧町名を復活させたい〜完結編〜

11月号に掲載した「昭和の旧町名MAP」に関するお手紙を、伊勢にお住まいの方から頂戴しました。手紙には旧町名を復活させたい!を読んだことをきっかけに、エッセイを自作されたとありました。お手紙を頂くと大変励みになりますし、楽しく読ませていただきました。本当にありがとうございます。
このシリーズも今月で一段落となりますが、ご自宅に旧町名に関する資料や、戦前の写真などがありましたら、ぜひご連絡いただければ幸いです。
さて、中締めとなる今回は、甲府市役所で「こうふコンシェルジュ」のお仕事をされている、成澤治子さんからお話しを伺い、これからの甲府について考えていきたいと思います。

◆ こうふコンシェルジュ

川上:まず、こうふコンシェルジュというお仕事ですが、どんなことをしているのか教えてください。
成澤:甲府市外から移住してくる人達に甲府という町を紹 介したり、こうふ開府500年の情報を発信していくのが私の仕事です。
川上:もの凄く幅の広い仕事ですよね。制度とか補助金などの専門知識だけでなく、甲府の歴史や魅力も知らないといけない。成澤さんだから出来る仕事なんだと思います。
成澤:私自身が甲府の中心市街地で生まれて、郷土愛がとても強い両親に育てられたことが、大きく役立っていると思います。

甲府コンシェルジュ 成澤治子さん

◆ 旧町名の思い出

川上:そうですよね。成澤さんは丸の内で生まれ育ったんですもんね。
成澤:そうです。小さい頃は、県庁が自宅の庭のような感覚でしたし、周りの会社や商店で働く人たちが優しく接してくれて、いろいろなことを教えてくれたり、遊んで貰った記憶があります。
川上:旧町名にはどんな思い出がありますか?
成澤:私が生まれた頃は既に丸の内だったので、旧町名はおじさんやおばさんの口から出てくる町名って感じでした。それと子供クラブのイメージ。私は橘町子供クラブでした。
川上:私もよく親父の口から「百石町」という町名が出てきて、どこ?と思いました。このコーナーでも紹介してきましたが、今でも自治会名として旧町名が残っているケースは多いですよね。
成澤:私は丸の内という町名も結構気に入ってるんです。そこで生まれ育った訳ですから、親しみもあるし、誇りも持っています。

株式会社ニュースコム 川上明彦

◆ 現在のこうふ

成澤:その町独特の匂いってありませんか?それって長い年月が積み重なって、はじめて出来るのだと思います。ひとつの町にふたつの城下町跡がある甲府は、その長い歴史がとても素晴らしい匂いを放っていると思います。
川上:良い事も悪い事もいろいろな積み重ねで、その町の匂いって出来ていく気がします。町は人があってはじめて成り立ちますもんね。
成澤:そうそう!そういうことから、私は今の甲府市中心市街地って、とても楽しいと感じています。もともと郭内だった場所が開放されて町ができ、空襲で全てが焼けてしまった後も、ものすごいバイタリティーで復興し、高度経済成長と共に発展した。そんな歴史が全て詰まっている町で、昔からの老舗もあれば、若い人達がチャレンジできる環境もある。チャンスがいっぱい転がっていると思います。だからこそ旧町名から町の歴史を知り現代に生きる私はどうあるべきか?を考えることは、とても大切なことだと思います。私はこの町に育てて貰ったので、特に強く思うのかもしれません。

◆ こうふ開府500年

川上:2019年の開府500年に向かって、こうふコンシェルジュとしてはどんな活動をしているのですか?
成澤:インターネットを通じて、甲府にある味わい深い建物や場所、時代を超えて価値あるものを、甲府に住む私の目線で紹介しています。誰でもできることを私がしても意味がないですし、私がこうふコンシェルジュという役割を与えられた意味って、そこだと思いますので。
(https://kofu500.theblog.me/)
川上:文章から楽しさや甲府愛がとても伝わってきます。あれを読んだ人は、甲府って素敵な町だなって思うはずです。

◆ これからの甲府

川上:成澤さんは、甲府がどんな町になっていって欲しいですか?
成澤:甲府は良い意味でこぢんまりしていて、良い塩梅だと思うのですよね。私にとってはかもしれませんが、今でもとても楽しい町だと思います。無いモノを見つけてダメというのではなく、まずはこの町に住む人が在るモノの素晴らしさをもっと知るべきだと思いますね。
川上:これからの甲府に対して私たちができることは、お金に換えられない魅力を発信し続けることかもしれませんね。我々は甲府の魅力を発信していく同志ということで、これからも一緒に頑張りましょう!
成澤:そうですね。引き続きよろしくお願いします。

最後に

旧町名を復活させたい!を連載していたのは、実際に旧町名を復活させることが目的ではなく、旧町名を切り口に歴史を知ることで、我が町「甲府」に誇りを持って貰いたいという思いからでした。我が町に誇りが持てれば、胸を張って「甲府はいい町だ」と言えますし、もっと町のことが知りたくなるはずです。町に詳しい人が増えるということは「甲府のコンシェルジュ」が増えるということで、特に若い世代のコンシェルジュが増えれば、甲府はもっともっと楽しい町へとなっていくでしょう。
町は歴史と人ありきです。横にも縦にもつながることで、町は生き続けます。
2019年に迎える「こうふ開府500年」は、我々甲府市民にとって、それを考える良いきっかけではないでしょうか?私も「自称」甲府コンシェルジュとして、我が町がもっと暮らしやすい町になるよう、できる事をコツコツとしていきたいと思います。
長きに渡り、このシリーズを応援してくださった皆さんには、大変感謝しております。寒さに向かう季節、風邪などお召しになりませぬよう、ご自愛ください。