世界とは無数の個人の連鎖かもしれない
『断片的なものの社会学』

トルストイの『アンナ・カレーニナ』には「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」という言葉がある。幸福、不幸の定義は知らないが、この本から一見した幸福な家庭にもその内に闇もあれば、逆もまたあるということを知った。▼それぞれの人間は統計データでは表されない。社会は無数の生き様の集合体である。今回取り上げた本の内容紹介には「路上のギター弾き、夜の仕事、元ヤクザ…人の語りを聞くということは、ある人生のなかに入っていくということ。社会学者が実際に出会った『解釈できない出来事』」とある。1ページごとに、心がざわめき、人からの安易な判断を受け付けない。しかし、人それぞれだからといって突き放すこともできない。▼今年のアカデミー賞で話題のポン・ジュノ監督がスピーチでスコセッシの言葉をひいた「最も個人的なことが最もクリエイティブなことだ」。この本で読書会がある。詳しくはイベントページから。

『断片的なものの社会学』
岸政彦(著) 朝日出版社 1,560円(税別)