第25回 子供たちの成長を楽しみに

 日本棋院の女流棋士である。今でも後進の指導に情熱を傾け、特に子供たちに温かい視線を注いでいる。
白鳥さんは大正8年生まれ。子供の頃住んでいた東京で父親から手ほどきを受け、「才能を見出した」近所のおじさんからも教わったことを覚えている。戦時中は上海で過ごし、日本人クラブで碁の師範を務めたこともある。また、かつては差別が激しかったハンセン病の施設を慰問。患者を相手に対局して大いに感激された経験も持つ。「家族からは止められる時代だったのですが、この慰問はとても勉強になりました」一緒に訪れた当時の大蔵大臣、国務大臣とともに写真に納まる白鳥さんは、患
者への慈愛と凛とした棋士の風情に満ちている。若いうちから将来有望な女流棋士であったことを裏付けている。

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 「碁は宇宙だと思っています。白黒の石は陰陽です。碁盤には9つの星があります。その宇宙は無限であり、碁を打つ頭脳もまた無限です」と解説の後「年の割りにぼけないのは碁のおかげ」と謙遜した。今碁盤に向かうと30手ぐらいを読むという。「若い人は何百手も読みます」といい、頭の体操には最高だという。
 昔公家の間で広まり、紫式部も打ったと伝えられる。近くは江戸時代末期の篤姫もテレビドラマで何回となく打つ場面が出てきた。「武将のような知謀が必要な戦略家にはとても気に入られました」
 そんな白鳥さんが最も願っていることは、一人でも多くの子供が碁に向き合ってくれるようになることだ。「情操教育にはとてもいいんです。思考力がつき考えが深くなります。辛抱するときは辛抱し、積極的に出るときは思い切って打つ碁の勝負で、養われるのです。無理もできない、自分の主張ばかりできないという心。今欠けているものを取り戻すのです」

今年8月には日中韓3国の小中学生囲碁交流大会を甲府で開いた。3年前行政からの補助を受けて始まったが、今回はなし。「せっかく根付いた交流なので」と、みんなで持ち寄って大会を成功させた。各国7人づつの子供が出場して対戦。きらきら光る目で碁盤に向かう姿を見て、困難を乗り越えて開催した意義を見出した。
 「小さいときから興味を持たせ指導することがだいじ。今ではネットでも本でもテレビでも教材はいっぱいある。興味を持ってもらいたいのが願いです」といい、成長を楽しみにしている。
 このほか白鳥さんは月1回、北東公民館で女性のグループを指導している。
この「山紫会」には北杜市や鰍沢町など遠方から来たり、介護施設の所長さんもいれば、小学6年生もいる。女性への普及も大切だと考えている。

 日本棋院で年間優秀者に贈られる棋道賞を2回。今年3月には権威ある大倉賞を受賞、まだまだ現役の指導者を続ける。

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