第23回~自分色で花作り~

ikiiki-flower2-1.jpg 布を葉や花びらの形にカットして、思い思いの色に染め上げるアートフラワー。9月のある日、国母2丁目の篠原シズ子さん宅に清水美枝さん、輿水悦子さんと指導をしてくれる小沢文香先生(アトリエ幻染花主宰)が集まった。月1回の出張教室だ。
 白地のサテン、正絹、ビロード、シールなどが材料。カットされた葉や花びらはアートフラワー専用のシリアス染料で色付けされる。何色も何色も混ぜて気に入った色合いに仕上げていく。もちろん筆を使うのだが、指で染料を伸ばすこともして、まさに根気を必要とする手仕事だ。


 花びらは平面ではない。うねりをつけるのには電気ゴテを駆使する。コテの種類も先端がとがったもの、筋が入ったもの、丸いものーと数多くある。波打つ花弁やペップと呼ばれる花の芯、それに葉脈など用途に応じてコテが選ばれていく。
 篠原さんと清水さんは20年ぐらいのキャリア。書道教室を開く篠原さん方が自然と集いの場になった。輿水さんは8年ぐらい前から。この日はペーシュというバラの一種に挑戦していた。色はオレンジがかった黄。「お金が貯まるように黄金色を選びました」。
 午前中から取り組み、お楽しみ昼食は清水さんお手製のお稲荷さんをほうばった。小沢先生を囲み”得意な”おしゃべりがしばらく続く。「教えるというより楽しんでいます。皆さん人生の先輩ですので」という小沢先生は「花が好きで、手先で細かいことができる人であれば、誰でも始められます」と、手軽さをアピールする。
 篠原さんは「自分の好きな色を出せるのが面白い」と言う。そして玄関で自身の書作品に、作った花を添えて客を迎える。独自色を生み出していくのはやりがいもあるし、個性も発揮できる。ただ、小沢先生の鮮やかではなく、ちょっと枯れた色使いに皆は気に入っている。
 作品の発表の場は市民文化祭や県民文化祭。「売ってください」という人がいるが、「商売をしているのではないから、喜んでくれるのならプレゼントしちゃいます」と3人は口をそろえる。輿水さんは一昨年娘さんが嫁いだとき、白とピンクの2着のドレスに合わせてブーケを二つ作った。
 清水さんも今年6月、息子さんが結婚。花嫁さんにブーケをプレゼントした。ご主人が協力的で「花びらをカットしてくれるんです」とうらやましいコンビだ。
 針金でのまとめ、ボンドを使った接着も手順を考えながらの根気と集中力。ルリタマアザミという直径3センチの丸い花には70枚もの花びらが挿し込められている。「はじめるときは考えていなかったけど、今ではボケ防止になると思って」と明るい3人は、老けている暇はないようだ。

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