2019年7月号 忍野八海
忍野八海は出口池、御釜池、底抜池、銚子池、湧池、濁池、鏡池、菖蒲池の八つからなる湧泉群である。水源は、富士山からの伏流水および杓子山から石割山に係る火山山麓からの伏流水であり、雪解け水が、約1万年前以降に形成された新富士火山の透水層、および約10万年前に形成された古富士山の堆積物の不透水層部の溶岩の間で数十年の歳月をかけてろ過され湧き出したもの。その豊かな水系から国の天然記念物に指定され、中を泳ぐ魚が宙に浮かんで見えるほどの透明度を誇る。
かつて富士講の人々は富士登拝に先立ち、八つの湖沼群において水行を行ったとされ、八つの池(現在の忍野八海)は「富士山根元八湖霊場」と言われる富士修験の霊場である。昭和60年に「全国名水百選」に選ばれたことで観光地化が進み現在に至るが、名水存続のための環境保全が叫ばれ始めている。