2019年4月号 太白桜

 真っ白な大輪の一重桜。日本で一度絶滅したとされ、英国の桜研究家が栽培していたものを昭和7年に逆輸入したという珍しい経歴を持つ品種である。
その際に元公爵の鷹司信輔が「太白」と命名し、第15代佐野藤右衛門によって全国に広がった。
 明治後期、現在の中央市玉穂地区の土手沿いに乙黒桜と呼ばれる花見の名所があった。ソメイヨシノから十日遅れて開花するその「駒繋(こまつなぎ)」という桜は、太白と同一品種であるという。昭和初期、笛吹川の河川改修などにより伐採されたが、その姿を復活させようと中央市乙黒の田中松彦氏が僅かに残った子孫の木から苗木を増やし、大切に守り育てていた。そんな貴重な桜が甲府市歴史公園に植樹されたのは平成20年2月。以降、毎年4月の開花に合わせ太白桜祭りが開催され、多くの人の目を楽しませている。

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