2010年11月号 藤村記念館
藤村記念館。明治8年に巨摩郡睦沢村に学校校舎として建てられ、その後昭和36年まで睦沢公民館として活用。老朽化による撤去を逃れ昭和41年、武田神社境内に移築復元された国指定の重要文化財。平成22年10月1日、甲府駅北口に移転し、交流ガイダンス施設として新たに開館した。
この建物は、山梨県令藤村紫朗が積極的に奨励したとされる擬洋風建築。明治初期から中期にかけ多くの官公舎、学校、商家がこのような様式で建てられた。藤村紫朗は肥後熊本藩に生まれ、尊皇攘夷・倒幕運動に身を投ずるなど維新の動乱期を生き抜き、維新後の明治6年?20年山梨県の県令(知事職)をつとめた。藤村は産業・土木・教育政策をおし進め、県営の官業製糸場や官業試験場を建設し、当時輸出産業の中心であった蚕糸業を全国トップレベルに押し上げたり、甲州街道と青梅街道を改修して道路網を整備し山梨の近代化に貢献する。
維新(いしん)とは「維新=これあらた」。「変革」の意味を持つ語句。明治の時代。近代日本がスタートした「維新」の時代である。洋風の建築物はまさしく「これあらた」。文明開化を視覚的に印象付けた、近代化の象徴であったに違いない。