春光堂書店 宮川大輔さん

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昨年の9月号から連載をしている「旧町名を復活させたい」ですが、今月は一回お休みです。
今回は弊誌で絶賛連載中のコーナー「春光堂のぼちぼち行くじゃん これからが街の本調子!」の連載20回を祝して、春光堂の宮川さんにご登場いただき、本のこと、街のことについていろんなお話しをお聞きしたいと思います。
宮川さんは甲府市中心街、銀座通りの書店「春光堂」の4代目。メディアに登場することも多いので、ご存知の方もいらっしゃるのでは?

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宮川大輔 / 春光堂
創業もうすぐ100年の本屋さん。「中心街でのお買い物がまちを元気にする!」をモットーに、本と街の魅力を伝えるべく活躍中!

本は自分の世界観を広げる入口のようなもの

川上 連載20回おめでとうございます。そしてありがとうございます!お祝いとお礼の気持ちを込めて、宮川さんが昨年の11月号で紹介していた松林軒さんの「絹多ぐるみ」をご用意したのでお召し上がりください。

宮川 ありがとうございます!甲州八珍果のくるみ、ぶどうなどが入ったお菓子ですね。

川上 さて、早速ですけど宮川さんのモットーは本と街の魅力を伝えることということですが、マチコレ!の連載を通じてあらためてそれを強く感じますね。

宮川 ありがとうございます。ちょっとでも興味を持って貰う本ってどんなものだろうと考えながら選んでいます。私は本屋ですが本が全てとは思ってなくて、やっぱりその場所へ行って人と触れ合い、体験をすることがとても大事だと思っています。
4月号でも触れましたが例えば中心街のハッピーキッズという子育て支援施設では、子供達を散歩させる時に路地・横丁を通ることもあるそうです。感受性の高い子供達は五感でその空気を感じてワクワクしていると思うのですが、そういうことってとても大切だと思うのですよね。
自分の中に無い異質なものとの出会いって凄く刺激になるし、視野を広げてくれると思います。ですから私自身も街のアレコレを見て回るのが好きですね。

川上 なるほど。本はそのうちのひとつということですね。

宮川 そうですね。自分の世界観を広げる入口のひとつだと思います。

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川上 私も同じような感覚で旧町名のことを調べています。もともとは街を歩いていて、道祖神や石碑などの存在に気付き、そこにある歴史的背景に興味を持って調べ始めた訳ですが、歴史を知れば知るほど、それがそこにある意味や当時の人たちの思いが伝わってきて、私の中の世界観も広がっていきました。今ではそれを後世に伝えていかなければという思いが生まれています。

宮川 以前のコーナーでは山梨県中を歩き回っていましたもんね。
旧町名は私も興味があります。地区の防災訓練では地区ごとにプラカードを持って並ぶのですが、そこに書かれている地区名の由来を並んでいる人のどれぐらいが知っているのか疑問です。私も知らない地区名が結構ありますよ。

川上 町名の由来はさまざまで、そこに沼があったからとか、木が3本あったからなど、とても短絡的なものもありますが、逆に当時の風景を描写している訳ですからとても伝わってきます。それに、個人的に昔の方のセンスって情緒が感じられてとても好きです。
歴史といえば春光堂は今年で創業97年ということですが、創業者はどんな思いがあって書店を立ち上げたのでしょう?

宮川 実は私が最も知りたいのがそこなんです。今ではそれを知っている人が誰もいないのです。

川上 口伝と同時に資料などを残していくことも大事ですが、甲府市中心街は戦争であらゆるものが焼けてしまったので残念ですよね。これは旧町名とその由来を後世に伝えていくことも同じですね。

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宮川 以前にご紹介した「逝きし世の面影」という本は江戸の終わりから明治にかけて日本にやってきた外国人達の日記や絵の記録をまとめた本ですが、読むと江戸には素晴らしい風俗・文化があったことが分かります。結局、近代化と引き換えに日本人はさまざまなものを手放し、受け継がれなかったものが沢山あるのですけど、そこには一度失うと二度と手に入らないものが沢山あったのだと気付かされます。

川上 ご紹介いただいた本の中に「新 世界の路地裏」という書籍がありました。写真がメーンになりますが、どれも歴史が感じられ、独特の雰囲気と情緒がたまりません。甲府市中心街も路地・横丁が多く、全盛期は「西の広島、東の甲府」と言われるぐらい盛り上がっていたそうです。今でも頑張っているお店がいくつかありますが、あの雰囲気は新しく作り直したら絶対に出ないですよね。

宮川 そうそう!県外の友達が甲府に遊びに来る時は必ず連れていきますよ。皆「こりゃ凄い!」と喜んでくれます。

川上 私は同じことが春光堂のような歴史のあるお店にも言えると思うのですよね。県内には創業100年を超える企業がいくつもありますが、それらは地域の資源でもあるので、我々が一緒になって守っていくべきだと思うのですよ。

宮川 そう言って貰えると嬉しいですね〜!

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自分自身を改修していきたい

川上 今後もこのコーナーを出来るだけ長く続け、1,000回を目指していただきたいのですが、コーナーを通じて何か意識していることはありますか?

宮川 街を見る視点を増やしていきたいですね。それは本だけでなく人との出会いも同じで、自分自身を改修していきたいです。会話ってこちらが想定していた回答が返ってくることは少ないですよね。その意外性ってとても重要だと思うのです。
このコーナーをはじめてからいろんな人に声を掛けられるようになりました。その出会いからも刺激を受けたいですね。

川上 自分が持っている価値観とは違う価値観を持っている人や本と接することで、自分の視野を広げていくということですね。

宮川 そうです。例えば課題図書って自分の好みでは無い本だったりしますが、読んでみると自ら選んだ本より面白かったりします。これからも意外性を楽しんでいきたいですね。

川上 なるほど。では今後も意外性のある本の紹介をよろしくお願いします!
本日はありがとうございました。

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