第23回 戦争末期に非常事態対策

昭和19年、戦局は大きく日本敗戦に傾き、20年3月東京大空襲など、米軍機の本土空襲が本格化した。この間、政府は全国の新聞社に輪転機の疎開を勧告したり、20年3月13日には閣議で「新聞非常態勢に関する暫定措置要綱」を決定した。内容は持分合同と共同印刷の実施である。


持分合同とは、地方紙(県紙)を母体としてこれに中央紙がそのエリアで配達していた部数を合わせて、地方紙に印刷発行を委託させるもの。山梨日日新聞は4月、毎日新聞と持分合同し題号「山梨日日新聞・毎日新聞」と併記。毎日新聞からは8人の出向者を迎え、さらに時局を乗り切るため編集、施設ともに強化した。これにより飛躍的に充実した体勢が構築され、戦後の発展の基礎を築くことになった。

また発行不能の場合も考えて、全国のあちこちで共同印刷所も設けられた。
新聞社がいかなる場合でも、発行を続けられる対策を築く一方で、各家庭にも完全配達ができるような取り組みもなされていた。東京都豊島区で作られた資料によると、「隣組回報」として区役所、警察署、郵便局、新聞配給会の連盟で、郵便や新聞の配達確保についての至急のお願いがされている。

要約すると、「決戦下皆様への情報は戦場でも後方でも重要な便りです。便りを各戸に配達することや重要な記事を報道する日々の新聞配達は私たちに課せられた重大な任務であります。
米英撃滅のため多くの困難を排しその責任を全うしなければなりません。
ついては、㈰町名・地番・氏名札を改めて掲出(表札が古くて読みにくいもの、名刺を代用したもの、まだ掲げていない方、同居の方など、警察の戸口調査や郵便物、新聞の配達上全く困りますから、新たに判るように掲出または改めて下さい)㈪郵便・新聞受け箱設置(郵便物、新聞の配達を正確、迅速、簡易にするため、受け箱のない方は適当の資材を活用して是非新設してください。また商店の方は特に朝晩戸締りの場合など、差し入れ口がなくて困りますから、店先に適当の設備をして「郵便、新聞受口」と標示して下さい)。

常に完全配達を心がけようとする先人の心意気が伝わってきて、改めて基本に忠実な業務の大切さを認識するにいたりました。