第28回 新聞講座と各種検定で基礎力アップ~山梨学院大の取り組み(上)~

今、若者の活字離れ、新聞離れが指摘されている。山梨学院大学現代ビジネス学部の小西順人教授は、そんな学生たちを心配する一人だ。「日本中の大学で起きていることですが、教科書を読んでも理解できないという現実があるんです」。そこで、専門教育への導入、国語力、思考力アップ、社会に対する関心を高める̶ことを目的に新聞を使った講座を開設した。「メディアとビジネス」がそれだ。新聞を読まないという比率が高い集団は学力が低いという因果関係も後押しした。
2005年から始めた講座では各新聞社から編集、広告などの専門家を講師に呼び「新聞とは」という初歩的知識から、高度な解説までをレクチャーしてもらった。今の学生は大教室講義でも出席率は非常に高い。受ける態度も悪くはない。しかし新聞購読率は低く、講義内容をどの程度吸収したかとなると心もとない。
そこで同時に現代用語検定と山梨日日新聞社などが実施しているニュース検定への参加を促した。もちろん事前の練習問題などで知識を深めるのが目的だが、「資格なら何でも取っておけば就職に有利だろう」と考える学生気質をくすぐる手段でもあった。
現代用語検定は現在、高校入試のための塾で小論文指導で使ったり、生涯学習に取り組む年配者も参加している。そんな中で練習問題の文章を読んでも理解できない学生が多いことに驚かされたという。「日常的に新聞を読んでいないからだ」と、指導を続けるうち、「やはり読んでほうが成績がよい」と、学生たちも認識するようになった。「興味のない話を聞くのはイヤだ」
という学生が、耳を傾けることができるようになった。検定に取り組むことで克服しつつある。 当初現代用語検定で、4級合格者は非常に少なかった。不合格者には単位が与えられないことにし、ニュース検定でリベンジできるという二重の働きかけをし、やる気を持続させた。学内ですでに、簿記、検、秘書検定などに対して顕彰している「キャリアアップ サポート賞」の対象科目にもニュース検定を組み込んでもらった。
ニュース検定も回を重ねるうちに確実に成績がアップしてきた。4級合格者が10数%だったのが、最近は30数%に。夏休みと冬休みにある団体検定でも、「以前はワースト2かビリだったのが、3級合格者が全国平均を大幅に上回った」という。
小西教授は緩やかではあるが、確実な手ごたえを感じている。