第20回 愛車を駆って、サーキットを疾走

182センチの長身でスリムな体にサングラスが良く似合う。改良に改良を重ねたホンダS2000でサーキットを疾走する横内さんは「頭の中は真っ白で、何も考えない。これがたまらない至福の時です」。

 8年前、車を愛する仲間が全国にいることを知り、オフラインミーティングに参加。ホンダが50周年を記念して販売したS2000にほれ込んだ。「FRで運動性能がレースに向いていて面白い。
趣味や楽しみを長く続けるには、50歳代前半で始めることが大事。金も時間も余裕がでたところで、いい”人””に出会ったと思っています」と、しゃべりは擬人法だ。


 活動の場は韮崎のスポーツランド山梨から始まって、富士スピードウェイ、栃木、茨城、仙台など。富士では直線を時速230キロで飛ばし、高速コーナーで
160キロ、通常のコーナーでも90キロのスピード感覚を楽しんでいる。サーキットでトライするのは自分のタイムの向上を目指すタイムアタック、順位を競
うスプリントレース、それに耐久レース。9人ぐらいでチームを組んで12時間耐久レースにも臨む。100何十台という車が、2車線道路の渋滞時を思わせる
混雑の中を、いかに抜け出して優位を
保つか。ピットでの給油回数を少なくするために経済速度を瞬時に計算してラップをドライバーに伝えるーなど、全員の呼吸あわせが物を言う。「車は正直だから、すぐ(反応が)返ってくる。それが面白い。自分の言うことを唯一きいてくれるやつです」。

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の敏感なリアクションをさらに研ぎ澄ませるためにトレッドをワイド化、それに合わせてボディ外装を変更、吸・排気系、足回りなども改良して原型はとどめて
いない。「13万キロ走っているが、手が加えられていないものは何もないといってもいいほど。3台分ぐらい買った勘定です」。

 車の構造は仲間や、昭和町清水新居の「グッド スピード」代表・加藤晴彦さんらと研究し合い、車検も自ら出向く。「時間があれば、毎日でも車をいじっていたい」という横内さんの家族は、「余計な遊びをしないからいい」と応援してくれているという。

 
「でもあと2年ぐらいでしょうかね。年々動体視力が落ちるので、レベルを落とさないで続けるのには限界があります」という傍らで、加藤さんは「今後はマネ
ジメントを習得して、将来はチームの監督になってほしい」と頼りにしている。横内さんの面倒見の良さがうかがえる。一般道もすっ飛ばす”チョイ悪親父”を
想像するかもしれないが、「中央道を舞っているように走る車を見ると、どの程度整備しているのか心配になる。高速を含む一般道が一番危険で、他人より安全
運転をしています」と強調する。朝早い海産物卸会社の役員で、臨済宗妙心寺派の僧侶の修行をしたこともある真面目な苦労人だ。

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