2010年4月号 神代桜
奈良時代、『万葉集』において桜を詠んだ歌は40首、梅を詠んだ歌は100首程度。それが平安時代の『古今和歌集』ではその数が逆転する。花見の「花」は、梅から桜へと変遷していったらしい。花見の風習が広く庶民に広まったのは江戸時代、徳川吉宗が江戸の各地に桜を植えさせ、花見を奨励してからだといわれている。毎年この時期になると桜前線が日本列島を北上する。この前線はソメイヨシノの開花を基準にしているが、実は全国のほとんどのソメイヨシノが寿命(60年程度だと言われている)を迎えていると言われている。しかし、山梨には恐るべき樹齢を誇る桜がある。その名は「山高神代桜」。北杜市武川町の実相寺境内にある樹齢2000年ともいわれるエドヒガンザクラの老木、日本三大桜のひとつである。2000年もの間、ただ一度さえ休むことなく花を咲かせてきたこの桜は日本武尊が東夷征定の記念にこの桜を植え、その後日蓮聖人が木の衰えを見て回復を祈ったところ再生したため、「妙法桜」ともいわれている。樹高約10m、根回り約12mは日本で最古・最大級のエドヒガンザクラとして国指定天然記念物に指定されている。2000年である。ソメイヨシノは私たちとほぼ同様の寿命だが、この老木が同じ場所から見てきた2000年は想像を絶する。