2014年11月号 甲州百目ころ柿
干し柿の中でも、あんぽ柿に対し比較的水分が少なく、甘み成分の結晶化した白い粉が吹いたものは「ころ柿(枯露柿)」と呼ばれる。天日で乾燥させる際にまんべんなく陽が当たるよう、ころころと位置を変えることがその名の由来。山梨では武田信玄公の時代に陣中食として奨励され、美濃の国から蜂屋柿を移植して増産をはかったという。江戸時代には幕府への献上物となり、柿は甲州八珍果のひとつに数えられた。昔ながらの手もみ作業で丹念に作られる甲州百目ころ柿は今でも市場の高級品だ。
甲州市塩山松里地区は全国有数のころ柿の里と呼ばれ、多くの民家の軒先にころ柿のすだれがかかる。寒さ深まる晩秋、陽を浴びたその色彩の暖かさに日本の原風景を見る。