2014年10月号 酒折宮
酒折は甲斐の国から他国へ通じる九つの古道「甲斐九筋」の起点であり、大和時代の甲斐の国の中心地であった。山梨県で唯一、古事記、日本書紀に記載があるのがこの地にある酒折宮である。記紀によれば、日本武尊が東夷平定の帰りに立ち寄り「新治 筑波を過ぎて 幾夜か寝つる」と片歌で問いかけたところ、御火焚の者が「かがなべて 夜には九夜 日には十日を」と歌の続きを返したという。この説話から酒折宮は「連歌発祥の地」とされている。
ひっそりとした境内は小学校の通学路。登下校時、拝殿に一礼をする子供の姿を目にする。壮大な古代英雄の神話を今に伝える、穏やかな佇まいの神社である。