2011年9月号 兜造古民家
江戸末期から昭和初期にかけて、絹は農家の重要な収入源であった。養蚕は生活と生産が同一住居内で営まれるため、屋根の中を階層化し、換気や採光が行われるよう工夫されたのが兜造りの古民家だ。外観が兜に似ていることからそう呼ばれる。産業から生まれた建築様式の典型と言えるだろう。
笛吹市芦川町には100~200年を経た156棟の兜造古民家が現存している。今や殆どの家の萱葺き屋根はトタンで覆われているものの、これほどの数の古民家が残る地域は全国的にもほぼ例がないという。その歴史的価値の中に、人の営みが滲んで見える。