2009年11月号 七五三
男子3歳と5歳、女子は3歳と7歳の年の11月15日。成長を祝って神社・寺などに詣でる年中行事七五三。現在では全国で盛んに行われているが、元来は関東圏における地方風俗だった。
旧暦の15日は鬼宿日(鬼が出歩かない日)で満月、旧暦の11月は収穫を神に感謝する月で、氏神への感謝を兼ねて子供の成長を感謝し、加護を祈るようになった。近世までの日本は、現在の開発途上国と同様の状況(栄養不足・健康への知識不足・貧困など)が原因で乳幼児が成人するまでの生存率が極めて低く、生存を祝う節目として定着したらしい。
現代では正装に準じた衣装(晴れ着)で臨み、女子は初めて化粧をして貰う。「生存を祝う節目」は、いつしか着飾るライフスタイルへと変遷を遂げたのは豊かな時代の象徴であろう。しかし、科学が解明されていなかった時代。人が森羅万象に脅威を抱いていた時代に、八百万の神や仏の存在に感謝していた気持ちは、今でも容易に理解できる。時は移り、今は地球環境を守る時代。多様化を極める現代にともすれば忘れてしまう「感謝の心」を考える良い機会ではないだろうか。