旧町名を復活させたい 〜上府中と下府中〜


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甲府の町づくりの歴史は大きく武田氏時代と甲府城時代に分かれており、武田氏時代につくられた町は上府中、甲府城築城に伴ってつくられた町は下府中と呼ばれています。(古府中、新府中と呼ぶ場合もある)
我々の記憶に残る旧町名は昭和の大合併で無くなったもので、甲府城を中心とした町づくりで命名されたものが殆どとなります。しかし、上府中の町名を下府中に移したケースも多く、そのような町名は更なる歴史を感じることができます。
また、紅梅町、常盤町、錦町など、以前に佳名シリーズでご紹介した通り、明治以降に甲府城が一般に開放されてつくられた町もあります。このような背景から、上府中の一部となる甲府城の北側は、さまざまな歴史が入り組んでいるようです。


先月号で取り上げた愛宕町から、「ここで転んだりすると良からぬことが起こるので、念には念を入れて転ばないように気を付けて歩きなさい」ということで名付けられたといわれている「三念坂」を下った場所にある「納戸小路」も不思議な存在です。

sannen1612▲三念坂

納戸小路は甲府城下町時代に納戸役の組屋敷があったことから付けられた名称ですが、市制が施行された後も昭和6年まで相川村の飛地として残りました。昭和4年の地図は甲府市の部分に色が塗られているのですが、納戸小路の部分だけぽっかり穴が空いています。甲府が誇るワイナリーの老舗「サドヤ」が既にこの地に見えますが、当時の住所はどうなっていたのでしょうね?
その後、御納戸町と呼ばれるようになったこの町も、昭和の町名変更で北口3丁目へと変わります。

nando1612▲現在の納戸小路

納戸小路の西側には日向町がありました。私はすっかりこの町名を「ひなたまち」だと思っていたのですが、「ひゅうがまち」が正しかったのだと今回初めて知りました。日向町は甲府城郭内の武家屋敷地であった森下小路が改称して成立。由来は佳名だと思われます。
昭和4年の地図には県庁官舎や製糸工場、県蚕業取締所などの大きな建物が目立ちますが、昭和25年に甲府駅に北口が設けられてからは更に発展していくこととなり、北口1、2丁目となった現在も山梨県立図書館や山梨文化会館など、大きな建物が目立ちます。

kitaguchi1612▲旧甲府駅北口

花園町は甲府城郭内の武家屋敷であった山手御門前が改称して成立。由来は佳名かと思えば、お花畑があったことによるそうです。明治36年に中央線が開通し、甲府駅が設置されると町域は鉄道構内に組み入れられ、人口は0になったとのこと。

甲府城の東側となる「境町」は甲府城の郭外にありました。南は郭内の竪近習町ということで、上府中との境に位置することから命名されました。
他の旧町名と同じく現在も通りの名称として境町の名は残りますが、ふらふらと歩いていると他にも名残を発見。「さかいはし」です。

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この「さかいはし」は平成になってから架け替えられたものですが、山梨県立博物館に所蔵されている懐宝甲府絵図を見ると、甲府城下町時代にも同じ場所に橋が架かっているのが分かります。
上府中と下府中の境となる町を出て橋を渡ると、そこにはどのような風景が広がっていたのでしょうか?地図を見ていてふと思ったのが、御納戸町や日向町、花園町も武田氏時代は違う町名だったのではということ。武田氏が滅亡後、豊臣秀吉が天下人になった際に甲斐の国は幕府の天領となり、一条小山に甲府城が築城された訳ですが、築城される前の景色も気になります。

甲斐の府中である甲府は、2019年に開府500年を、その2年後となる2021年には信玄公生誕500年を迎えます。私は開府500年という機会を「甲府市民がアイデンティティーを取り戻す時期」、信玄公生誕500年を「県外へ甲府をアピールする時期」だと捉えています。そして、そのプロセスを経て、甲府市がもっともっと暮らしやすい町になれば良いなぁと思いますが、皆さんはいかがでしょう?
そんなことを思いながら「旧町名を復活させたい!」のコーナーも、武田氏時代に触れていこうと思います。上府中は写真資料が少ないでしょうし、文献などは昔の言葉で書かれているため読むのが大変ですが、頑張って調べていきたいと思います。

最近は資料をお持ちの方からご連絡をいただくことが増えてきましたが、まだまだ足りておりません。上府中のことに関しても、何かしらお持ちの方がいらしたら、ぜひご一報いただければ幸いです。

文:川上明彦


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私共ニュースコムで運営している「文化のるつぼ へちま」に、旧町名を復活させたい!の原稿執筆時に使用している資料や、旧甲府市に関係する書籍類が閲覧できるコーナーを設けました。ぜひ立ち寄って、お茶を飲みながらご覧いただければと思います。
また、ご自宅に関連する書籍などをお持ちで、皆に見て貰いたいという方は、へちまにお持ちいただければお預かりします。

参考資料:甲府街史、甲府市統計書、山梨百年、甲府市HP、角川日本地名大辞典、懐宝甲府絵図

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