2008年12月号 餅つき

2008.12

 つい数十年前までは一般的な歳末の風物詩だった餅つき風景。現在ではイベントとしての人気が高く、「出張餅つきサービス」なる商いなども存在する。されど、餅はつかずとも正月には鏡餅を飾り、雑煮などの餅を食べる慣習はまだまだこの日本の国には存在している。「棚からぼた餅」「焼き餅を焼く」「餅屋は餅屋」「尻餅をつく」「餅肌美人」などなど…餅は日本人の食文化のみならず、その有用性や形状、そしてその製造工程などをたとえたコトバとして、わたしたちの暮らしの中にその存在を強く残している。
 しかし、月とうさぎの餅つきを連想した時代は遙か遠く、現代は我々の頭上に数千の人工衛星が打ち上げられているという時代。「餅」はすでに成果品として店頭に並んでいる正月に必要なモノであり、餅つきという歳末の風物詩の風景から認識する「餅」とは違うモノになってしまうのだろうか。
 竈の煙と吹き出す蒸気、臼と杵というシンプルな道具を使い、絶妙の息で搗き上げていく餅つきの光景が妙に懐かしく瞼に浮かぶ。

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