「ある時を境に変わってしまった」経験はありますか
『バベットの晩餐会』

田舎に暮らす二人の姉妹の物語。長女が若かりし時に出会ったフランス将校、次女が若かりし時男性歌手から手ほどきを受けたオペラ芸術との出会い、今はもう遠い日の思い出だ。慎ましく暮らす毎日の中で、突然に現れた亡命者の女・バベット。彼女はパリの天才料理人だった。▼彼女は助けてくれた姉妹と住民に一度きりの晩餐会を企画した。寒村に次々に届く見たこともない豪華な食材の山。そこにはかつての将校まで招かれ、登場人物それぞれの人生模様とその「思い」をのせた伏線が、たった一日の晩餐会に向かって集約する。物語に散りばめられたパズルが綺麗にはまっていく。バベットは力を出し切り芸術の魂を燃焼させる。そして、その料理は「この日を境に大事な何かが変わってしまう」ような劇的な場面を作り出す。▼この物語に合わせた美味しいイベント「シーンを味わう」を7月2日に開催します。きっと中心街もこれまでに多くの人の「劇的な思い出」をたくさん作ってきたのでしょうね。

『バベットの晩餐会』 イサク ディーネセン(著),
Isak Dienesen(原著), 桝田啓介(翻訳) ちくま文庫680円(税別)