街を活かすも殺すも「その一声」から。
『計画と無計画のあいだ』

1601銀座通りのアーケードに「柿」が干されていた。私は目を疑ったが、そこには確かに「枯露柿づくり」の看板があった。ここを通る人は商店街の空中で展開される風景にギョッとしただろう。だが、これはアーケードの装飾として斬新で面白い。資材は七夕飾りの残り物を利用してる。これなら経費はかからない。しかも「販売します」と商魂たくましい。センスがいい。こういうことができる人にこそ、何かを任すともっと面白いことができるかもしれない。▼そうした時に大切なのは声掛けだ。「いいなあ」と思ったその声を届けると人は元気になる。反応がなければやっぱり寂しい。当たり前だ。しかし、人が少ない時代になると、その声が届かない。「誰かが言ってくれるはず」から、「私が声をかける」に変えないとその声はその人に届かない。たった一人のその一声で、人は救われたり勇気づけられたりする。▼今回の本は、小さな出版社を起業した人の5年間の記録だ。新年何かに挑戦したい人は、計算、熱量、センス、どれについても参考になる。

『計画と無計画のあいだ』
三島 邦弘(著) 河出書房新社 1,500円(税別)