第14回 ボランティアで配食サービス

人暮らしや体の不自由なお年寄りに、夕食の宅配サービスをするボランティアグループがある。甲府・食事サービスをすすめる会。

haishoku1.jpg 12月中旬の水曜日、甲府市横根町の甲運第二保育所を訪ねた。今は園児が居ない遊戯室が、盛り付けの場になっていた。50~70歳代のボランティアが弁当箱を手際よく彩っていく。この日の献立は菊の花びらをあしらった菊ずし、魚はブリの照り焼き、白玉、ホウレンソウ、お年寄りに人気の白ダシで煮た長いも。黄、緑の色合いも見事で食欲がそそられる。


 10人弱の調理係りの中に岡田宣彦さんを見つけた。県の出納長、県土地開発公社理事長を務めた岡田さんは、3年前から参加している。「現職を離れて、今は家から外へ出ることが健康維持の秘訣だと思っている。料理は以前から趣味の一つで、ボランティアに生かせるのなら」と、加わっている。約100食というたくさんの仕込みなので、衛生面には特に注意をはらう。さらに「これだけ作るのは格闘技ですよ」というように、混ぜご飯を作る時など、腕だけではなく全身を使って手早く仕上げるのがコツ。調味料の按配も難しいし、ご飯の分量も間違って足りなくなると大変なことになる。でも「自分が持っているものが発揮できるし、逆にノウハウを吸収することもできるんです」と、岡田さんの向上心を満足させてくれている。

haishoku2.jpg この食事サービスの会は1992年に設立された。会長の古屋洋子さんによると、1人暮らしの男性が夕方、電気もつけずにそのまま寝ている姿を見て心を痛めていた時、アメリカで配食サービスがあるのを知る。有志とカリフォルニア州セーラム市に出向き、その実際を学ぶ。「行政が6000食、ボランテイアが600食作るんです。甲府でも何とかしたいとお願いをしたのです」。今では月、水、土を同会が、あとは甲府市社会福祉協議会が担当している。

 メンバーの栄養士を中心に月1回、献立委員会を開く。カロリー、たんぱく質、脂質、塩分を管理し、毎回メニューを変えている。12月はクリスマスに合わせてカップケーキも付く。1食500円のうち約80%が材料費、残りで水光熱費を賄っている。

 周囲からの支援もありがたい。調味料会社からは定期的に寄付を受けているし、2007年は市内のライオンズクラブから、いも洗い機をいただいた。事務机なども温かい志だ。

 盛り付けが終わり、色とりどりの風呂敷に包まれる午後2時ごろになると、各家庭に配食する係りが登場。県障害者福祉協会の春原克正さんもその1人だ。

 交代で約200人ぐらいがそれぞれの”任務”に関わる。一般の専業主婦をはじめ会社社長、大学教授OB、薬剤師̶などと一緒に現職県議も。岡田さんは「地域の人たちと顔も合わせられなかったので、今は積極的に近所づき合いをしています」といい、自治会、文化協会活動にも取り組んでいる。ライトハウスで朗読奉仕をしている妻・つたよさんとともに、セカンドライフはボランティア人生だ。