旧町名を復活させたい 〜元紺屋町と新紺屋町〜


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 先月号では上府中と、その境にある境町を取り上げ、武田氏時代の風景に思いを馳せてみました。今月号も2019年に迎える開府500年に向けて、上府中と下府中に関連する町名について調べていきたいと思います。

 甲府駅から武田通りを北上し、山手通りとの交差点を右折。
 暫く進むと愛宕トンネルの手前の信号に「元紺屋」という標識が目に入ります。

1701hyoshiki▲元紺屋の交差点名標識

【紺屋(こうや/こんや)】
江戸時代に染め物屋をさした言葉。または店の主人を指す。(Wikpediaより)

 城下町において職業別集住制が行われ、紺屋と呼ばれる染物屋が多く住んだことに由来する町名です。以前にご紹介した鍛冶町や桶屋町と同じですが、では、なぜ「元」と付くのでしょう?
 元紺屋町は武田氏時代に造営された町のひとつで、「こうや小路」と呼ばれていたことが甲府略志に記されています。甲府城築城の際に新城下町に組み込まれるも、下府中に町名を移し、当町には古をつけて古紺屋町となり、その後、柳沢吉保の甲府入封にともない元紺屋町となりました。

1701motokonya▲現在の元紺屋町

 武田信虎の時代には紺屋職人が居住し、農業のかたわら武将の旗指物や手綱、馬具の染物の注文に応じていたということで、500年以上前の歴史を伝える町名となります。少し歩いただけでも歴史のある町だと感じることができる元紺屋町は寺院が多く、大正10年の地図にも見える華光院は、武田信虎が荒神堂を建立したのがはじまりとされています。境内にある毘沙門堂(太子堂)は、柳沢吉里が大和郡山に転封となった際に甲府城内から移したものということから、甲府城内の建物として現存する唯一の遺構ということです。

1701taishidou▲太子堂

 また、華光院では「火渡り祈願祭」が開催されます。今年度は4月10日に開催されており、マチコレ!4月号のイベント情報にも掲載させていただきましたが、無病息災・願いごとの成就を祈願するお祭りで、山伏行列やミニ縁日、ママさんの手作りコーナーなどもあり、地域に根ざしたお祭りとなっているようです。
 地図上で華光院の下に見える伝染病舎は、明治30〜31年に甲府市で赤痢が大流行したため、患者の収容・隔離施設として急遽建設したもので、戦後に市立甲府病院に吸収されました。

 さて、前述の通り、紺屋町は甲府城築城の際に下府中に町名を移した訳ですが、それが新紺屋町となります。
 昭和の大合併によって無くなり、現在は武田1〜2丁目となっていますが、新紺屋小学校が存在するおかげで馴染み深いかと思います。
武田氏の時代の紺屋職人は、伝馬役や町人足役などの諸役免除の特権を得ていましたが、徳川家康もこれにならって特典を与え、府中の役引紺屋数67のうち43が当町にあったということです。

▲現在の新紺屋町

 紺屋町の名を後世に伝えるうえで貴重な存在と言える新紺屋小学校は、元三日町にあった本立館がルーツとなっています。本立館は明治5年の学制頒布によってつくられた学校で、甲府には以前にご紹介した善誘館(2016年5月号:旧工町)や振徳館を含め3校が存在しました。その後、本立館は明治7年に古府中村の要法寺(武田4丁目)へと場所を移しています。
 新紺屋小学校のホームページを見ると、創立記念日は明治16年の4月21日となっていますので、現在の場所へ移ったのが明治16年なのだと思います。もしそうであれば、さまざまな学校が明治から昭和にかけて場所を移す中で、新紺屋だけは名称を変えつつも長くこの地に存在する貴重な小学校ということになります。
 現在の建物は平成になって建て替えられたものですが、校庭には激動の昭和を経た旧門柱がひっそりと佇んでいます。

1701mon▲旧門柱

 空襲でほとんどが焼けてしまい、当時の面影を残すものが少ない甲府ですが、だからこそ有形のものはもちろんのこと、文化や価値観などもしっかりと後世に伝えていく必要性をあらためて感じます。

文:川上明彦


▲旧新紺屋町を歩いていたらこんな看板を発見。思わずうなずきます。


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武田通り沿い、元貯金局の北側にあるこじんまりとしたコーヒー屋さんをご存知ですか?20代の若者がこだわりの一杯を淹れてくれるお店ですが、平日は朝7:30から営業していて地域の幅広い世代のお客さんが集います。
この場所はちょうど甲府城のニノ堀があった場所。お店2階の席に座ってゆっくりと昔の街並みに思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

AKITO COFFEE
住所 甲府市武田1-1-13 TEL 055-254-3551
営業時間 7:30~18:00(土日は10:00~) 月曜定休


参考資料:甲府街史、甲府市統計書、山梨百年、角川日本地名大辞典、甲府教育百年史、Wikipedia、甲府略志

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