第13回 姿勢もキリッと大人のバレエ

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木曜日の夜、レオタード姿の窪川さんに迎えられ、レッスン場に案内されると可愛いバレリーナたちの「こんばんわ」という明るい声に包まれた。慣れない風景にちょっと戸惑った。
以前からバレエを鑑賞するのは好きだった窪田さんですが、自分が挑戦するとは思ってもいなかったようです。約10年前、「あるベテラン女性アナウンサーが、大人になってからバレエを始めたと言う記事を読んだのがきっかけです」といい、さらに新聞で大人のバレエ教室があることを知って「いきなり若尾バレエ学園のドアをノックしてしまいました」。


 「普通の運動着でいいと思っていたのですが、レオタードを着けると聞いてびっくりしました。何も知らなかったからできたのかもしれません」。同学園教師の成澤千香子先生によると、レオタードが一つの関門なのだという。
 公務員の窪田さんはレッスンを受けるとき、家のことも職場のことも考えず、自分のために集中できることが嬉しいのだと言う。そして風邪気味のときでも、学園で体を動かすとうそのように治ってしまうとも言う。
 先生からは「引き上げなさいと言われ続けています。上半身を上げるということですが、最近やっと意味が分かってきました。でもできないのです。ロシアでは立つだけで1年かかると言うほど基本姿勢は大事なんです」と難しさを話す。そういえばレッスン中、千香子先生と学園長の若尾多香先生からは「背中を伸ばして。ひざを伸ばして踵を上げきって。いい顔をして。顔もバレエ、もっと言うなら髪一本一本もバレエよ。真剣に楽しんで、苦しまないで、そして絶えず微笑んで」と次々に言葉が飛ぶ。
 「でも、きれいなもの=バレエに少しでも近づいて欲しいですが、一度に無理はさせません。体が固まっているので徐々にほぐすようにしています。みんな優等生ですが、”出来ない自分をかわいがってください” と言っているんです」と千香子先生。

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 窪田さんは当初、家族には茶道の稽古に通っていると言ってバレエを始めた。

「みんな知らないと思っていたのに実は家族全員承知済み。私だけが知られていないと思っていました」。家族は黙って温かく見守ってくれていたようだ。
「今後も続けられればいいなと思っています。きれいな姿勢、正しい歩き方を身に着けるだけでもいいじゃないですか。興味があったらとにかく飛び込むことをお勧めします。明るい雰囲気で、先生との会話も楽しいです」と言って、軽やかに舞った。