その18 ひとり親家庭の日々 前編

ほんのり汗ばむ季節の到来。緑のスポットには親子連れ。
しかし、親子、家族というかたまりにも様々なパターンがあり、なかなか知り得ない深い悩みも問題もそこには存在する。今回はシングルマザーとシングルファーザー(+予備軍)たちのトーク。

Aさん・・・まずは、日頃の様子や、悩んでいることなどをお話しください。

Bさん・・・毎日淡々と今日や明日のことだけ考えて生きている感じですね。毎日を繰り返しているだけ。悩みはたくさんありま
すよ。やっぱり経済的な問題が一番かな(笑)。

182.jpgのサムネール画像Aさん・・・子育てについてはいかがですか?

Bさん・・・シングルといっても、日頃は明るい我が家なんですよ。相手からの縛りがないことが自由奔放で思ったままの日常なんだけれど、ただ本来ならば、両親が居てお互いに修正されながら保たれるはずのバランスが崩れているのかもしれないという心配はあります。このまま社会に出して大丈夫なのか・・・って。

C さん・・・うちの場合もシングルになったその日から毎日を淡々と繰り返しています。子どもが生後1ヶ月で父子家庭になったので、最初の頃は大変でしたね。生物学的にも母親は3ヶ月ぐらい無理しても頑張れるホルモンが出ているらしいのですが、父親はそういうカラダになっていないので2、3時間おきのミルクやオムツ換えのころは死んじゃうかと思いました。一同・・・しみじみ。

Cさん・・・その後は、離乳食を始めるとき、幼児食に移行するときなど、何かが切り替わる時が辛かったですね。なんたって子どもの食事なんて作ったことなんかなかったわけですから。味の濃さややわらかさも少しずつ変わりますよね。

一同・・・お母さんよりもマメかも(笑)。

Cさん・・・それが過ぎたら毎日の繰り返しですよね。

A さん・・・大変だったでしょう?

Cさん・・・そうですね。慣れない料理を作っているときにも買い物に行きたくても「ちょっと見ていて」が言えないことが厳しかったですね。

181.jpg一同・・・たしかにね。

Cさん・・・といっても一人親だと倒れるわけにいかないでしょう?そうなると共倒れになっちゃうわけだから無理はしませんね。

Aさん・・・今は年長さんということですがどうですか?落ちきました?

Cさん・・・まあ、子どもだからジッとしてはいませんね。手を掛ける事はだんだん減りましたが、今度は目の行き届く範囲から外れやすくなって。

Aさん・・・そうですよね~。

Cさん・・・その時々で心配事は変化しますね。赤ちゃんの時には体力的に厳しいとか、大きくなったらなったで目が行き届かなくなる不安といった感じで。一同・・・納得。

Dさん・・・うちなどは夫と子どもと暮らしている頃にも「ちょっと見ていて」が叶いませんでしたから。やっと預けて美容院に出かけたら連れて来られちゃったりとか、泣いていてもワレ関せずではね。もう、もともと居なかったものだと思った方がいいのかなって考えましたね。

Cさん・・・でも、2人分の目と手があるのと1人分しかないのとでは違いますよ。

Dさん・・・たしかにそうかも知れないですね。ただ、子どもを守る両者の信頼関係がなくなると、そうまでして我慢しながら夫婦や両親をしていくのはどうかな・・・とか思いましたね。

Cさん・・・それは結婚観として?

Dさん・・・子育てや家族観かな。

Bさん・・・そうですね、悩むところですね。

Cさん・・・よく、相方の勤務の都合などでほぼ1人親と同じですよって言われる方は多いんですが、それと私たちの場合全く違いますよね。同じではない。たとえば、片方の親が倒れても、もう一人が帰宅して発見したり、その後の子どもを守れるという保険があるじゃないですか。そこが大きく違いますよね。

Bさん・・・たしかに、両親そろっていればそんなシミュレーションさえしないかもしれませんよね。

Aさん・・・仕事と家事、地域との関係、学校での親たちとの付き合いなど、私の中でもいろいろ課題があるのですが、皆さんはどうされているのですか?

Cさん・・・仕事と家事は、子どもの居る条件で仕事を選ぶしかありませんね。9時~5時勤務、土日休み。その分は収入は望めませんから大変なんですがね。地
域や学校に関しては自らはっきり伝えるしかないですね。「うちは一人親だからできないこともあるけれど、できることはやりますよ」って。
そこに理解を得ることはできると思います。できることは当然やります(笑)。

Eさん・・・うちの会社にもシングルマザーが何人かいるのですが、責任感が強
くて、しっかり働き、よい結果も出します。背負っているものが大きいので、こちらもとても信頼できますね。

183.jpgAさん・・・でも、疲れる時ってありますよね。子どもの前でも弱音を吐けない、職場でも吐けない、それが結局は子どもへの対応に出てしまったり・・・。夜寝る前に「あ~あ、ダメだなぁ大人気ないなぁ」って反省してみたり(笑)。

Fさん・・・欠けた親の部分を補うことって皆さんはしていますか?

Bさん・・・ううんしない。だって父は父だし、母は母だもの。

C さん・・・父子の場合、その欠けている部分がなんだかわからなかったりします。家事も育児もやっているし、三つ編みも覚えたらいいわけだしね(笑)。普段は意識していませんね。ただ、構造的には男なので、思春期の体の変化、初潮を迎える頃には身内の女性を頼るなどして心を配りたいと思っています。性別より個人差だと思うことにしています。

一同・・・確かにそうだよね。

Bさん・・・母親たちの方が、父親代わりもって言う人は多いみたい。格好ばかりのキャッチボールとかね(笑)。やりようがないんですよね。

Aさん・・・男の子の力わざの相手とか厳しいですね。

Bさん・・・そういった意味でも保育園のような集団の中で、お互いに力加減を覚えたり、男も女も関係なく繋がり合ったりすることっていいですよね。保育園に育てられる部分ってたくさんありますよね。それに比べて親が与えているものなんて大したことはないかもしれない。

Cさん・・・保育園に依存している部分って大きいですよね。

Bさん・・・決して丸投げと捉えられたら困りますけれどね。子どもにも親にも栄養となる環境ですね。

G さん・・・うちは妻と死別したんですが、子どもの祖父母がいて、私は仕事オンリーで家事等は一切任せてしまっているんですよ。そろそろ何とかしなくちゃと思いつつも、まだ崖っ淵に立たされていないということもあって、仕事ばかり。でも、料理ぐらい覚えなくちゃとは思っているんですけれどね。
Cさんなんてよくやっているなぁと思うわけです。問題が見えてないうちはなかなか・・・。

Cさん・・・そのうち息子さんが覚えて作るようになりますよ。

G さん・・・妻がなくなる前に「私が倒れたらどうするのぉ?」なんていわれて「コンビニもほか弁もあるから買いに行く」なんて冗談で言っていたわけですよ。まさか本当にそうなるとはね・・・。そのうち介護という問題にも直面するかもしれないので、やっぱりそろそろ考えなくてはと思っています。

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日常を刻みながらこの先に待ち構えている問題も一人で解決していかなければならない。でも、そんな一人親たちに対する制度や情報交換になるコミュニティーは?次回は『続・ひとり親家庭日々』参加者の方が展開している運動なども盛り込み、ますます活発な会話が飛び交う!